獅子鮟鱇詩詞

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zoom RSS 中国人の俳句と日本人の漢詩の叙述法について

<<   作成日時 : 2017/04/17 15:29   >>

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 中国人の詩友紫陌青猫さん( http://apple6111.fukuwarai.net// )が素晴らしい和詩を詠んだ。
.
  きのこより傘を忖度す小心者
.
  昔のきのこは今傘である
.
  傘の下できのこを糾弾できぬ
.
  傘の下で北のきのこを眺める

 これらの作品
 俳句のようでもあり川柳のようでもある。
 そのどちらとも思いかねる。
 そこで青猫さんは
 「和詩」と呼ぶことにしたのだと思うが
 青猫さんの作品は
 アメリカの核の傘の庇護を受けながら
 北朝鮮の核に対し厳しい姿勢を取っている日本の状況を
 簡潔な表現で批評している。

 青猫さんの批評は
 中国人の立場から見た日本の核政策
 ではあるのだが
 被爆と核の傘と北朝鮮の核の三つの関係を思えば
 日本人の私も
 そのとおりだと思わざるを得ない。
 そのとおりだと思ったうえで
 北朝鮮の核開発にどう対処していくのか
 隣人の腫れ物に触るのか触らないのか
 は別の問題。
 青猫さんの和詩も
 その問題には踏み込んではいない。

 そこで
 青猫さんの和詩は
 誰もがそのとおりだと思うことだけを詠んでいる
 と言ってもよい。
 誰もがそのとおりだと思うこと
 であれば
 すでに誰かが詠んでいると思ってもよいのだが
 つまりは類句があってもよさそうなのだが
 被爆と核の傘と北朝鮮の核の三つの関係
 を句材に選ぶ俳人も柳人もいそうにない。

 誰もが詠みそうなこと
 そういう普遍的なことを
 一個の詩人だけが詠んでいる
 そういう独創性が青猫さんの作品にはある。
 そこが素晴らしい。


 青猫さんの和詩
 日本語としての不備はない。
 しかし
 俳句らしく あるいは
 川柳らしく という点ではどうか
 ということで私が次のように添削した。
 
  きのこより傘を忖度むねを張り

  きのこ雲いまは隣りの傘借りる

  傘借りて隣りのきのこ糾弾す

  傘借りて眺める北のきのこかな

 しかし この添削によって
 青猫さんの作品がよくなったとは思えない。
 添削することで見えてきたのは
 俳句・川柳と漢詩の違い
 日本語の表現と中国語の違いだ。
 
1(原作)きのこより傘を忖度す小心者
 (添削)きのこより傘を忖度むねを張り

 小心者だから北の核を怖がるのだろう。
 原作には作者の考え、評価が含まれている。
 それに対し 私の添削は
 小心者→むねを張り とすることで
 作者の主意を削ってしまった。

2(原作)昔のきのこは今傘である
 (添削)きのこ雲いまは隣りの傘借りる

 これは八七を五七五に変えただけ。
 「今」を「今は」にすれば「昔の」は省略できるが
 原作は
 昔と今を対比させて対句的であり
 漢詩の叙述法。
 私の添削ではそれがぼけてしまっている。

3(原作)傘の下できのこを纠弹できぬ
 (添削)傘借りて隣りのきのこ糾弾す

 原作は
 AがBの力を借りてCを糾弾することはできない
 と言っており
 倫理道徳的にとても論理的。
 それを私の添削はぼやかしてしまっている。

4(原作)傘の下で北のきのこを眺める
 (添削)傘借りて眺める北のきのこかな

 この添削にも3と同様のボカシがある。

 このように
 青猫さんは、作者の考えを含め要点のみをしっかり文字にしようとしているのに対し
 私の添削は、その要点を作者の考え(主見)をぼかすことに腐心しているように思える。
 そして その違いは
 詩というものの言葉に対する青猫さんと私の違いであるのだが
 個人のレベル以上の問題として
 中国語の叙述法と日本語の叙述法の違いがあるように思える。
 そして それは
 漢詩が要点のみをしっかりと叙述するのに対し
 日本語の俳句や短歌が
 日本語の多様な表現のなかで要点をぼかす習性を身に着けおり
 読者の解釈・受け取り方への依存度を高めている
 その結果であるように思える。

 日本人の漢詩には
 それで何が言いたいのかがわからない作品が多い。
 書かれていることははっきりわかるが
 それで何がいいたいのか
 つまりは主見がわからない作品が多い。
 そして私も日本人だ
 ということを
 青猫さんの作品を添削させてもらいながら
 つくづく思い知らされた。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
わー!面白い、
層々剥ぎ、条理整然、納得。
大変勉強になりました。
評論家の才能に感心致します。
私から見れば
主見をぼかす表現は俳句川柳の魅力です、
そう書きたいでもなかなかできません
いつか書けるならいいなぁ、
私のぼかしている夢です。

青猫
2017/04/17 20:48
ありがとうございます。
俳句川柳と漢詩 お互い無い物ねだりかも知れませんね。
主見と余韻 そのバランスが難しいですね。
獅子鮟鱇
2017/04/17 21:14

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